30年ぶりくらいに、好きな漫画No.1が入れ替わったわ。

今年の6月までは『幽遊白書』が一番好きだったんだけど、7月からは一番はこれよ。

朝田ねむい先生の『スリーピングデッド』

上下巻なんだけど、わたし上巻以上に下巻の表紙が好き! という個人的趣味により、下巻の方のリンク貼っとくわね。


主人公の佐田は高校教師だったんだけど、不幸にも殺人事件に巻き込まれて死んでしまうの。ところが、目が覚めるとそこはあの世ではなく手術台の上。彼は科学者を名乗る男・間宮によってゾンビとして蘇生されたのよ。

佐田は、ゾンビ化研究のための実験体として、間宮に飼われて生きていかなければならなくなった。しかもゾンビ化した生物は同種の肉しか食べられないという……すなわち、ヒトのゾンビはヒトの肉を食べなければならない。人間の死体を合法的に手に入れるつては間宮にはなく、殺人を犯すしか佐田を生かす術はない。

他人を犠牲にしてまで生き延びる気はない佐田。研究には犠牲がつきものだと断言する間宮。

世間から隔絶された研究所のなかで、佐田と間宮は正反対の持論を闘わせるのだけど……。

という話。


まるで変態科学者によって拉致られるタイプのエロビみたいな導入なのだけど、中身はゴリゴリのシリアスでサスペンス…………最初はね。

偽善と露悪という真逆の思想を持ち全然噛み合わない二人が、共同で殺人を犯す事により、お互いにこの世で頼れる人は相手しかいっていう状況に陥ってしまう。

たった二人で狭い空間で暮らしていくうちに単純接触効果で打ち解けていき、情も湧いていく訳だけど……。

この物語がエモいところは、佐田と間宮両方とも、相手の真実を知らないまま仲良くなっていくところ。二人とも肝心な事は語らないから、知るのは本人と読者のみって事がある。

お互いに相手を理解するための情報が不足したままで、手探りでもって唯一無二の関係性を作りあげてゆくのね。

上巻で既に倫理と人間性を放棄し禁忌を犯した彼らには、最低でもメリバが確約されているようなもの。

だけど、破滅へのカウントダウンが着々と進むのを感じながらも、彼らは二人だけの愛をみつけ、最高に幸せな暮らしを営んでいく。

一体彼らの頭上には、どのような形で神の鉄鎚が振り下ろされるのか?

最終回の怒涛の展開は圧巻だわ。


ストーリーも衝撃なんだけど、見せ方が本当に上手いのよ。朝田先生、漫画が上手すぎよ。

こういう凄いものを描ける作家さんが商業BLという狭いジャンルに居てくれるなんて、有り難いの極みだわ……。


一般的な商業BL漫画としては型破りで、商業BLの掟を破りまくりだけど、でも『スリーピングデッド』は「愛の物語」としては商業BLジャンルの中では右に出るものはいないだろう怪作よ。

たぶん普段商業BLを読まない人の方が楽しめると思うので、BLというものに抵抗のない人はぜひ読んでみてね☆